自己受容の物語!羽海野チカ『3月のライオン』が面白い!【読んでみた本】

私は漫画が好きで、数々の漫画を読んできました。
その中でも今回紹介する『3月のライオン』はBest10に確実に入る面白さです。

まず何よりも言いたいことは、かわいいってこと。
『はちみつとクローバー』を書いたのも羽海野チカさんなのですが、人間を可愛く描くってことの天才だなと思いますよ。

あとがきで羽海野チカさんが如何に心身を削りながら漫画を描いているかが伺えるのですが、キャラクターへの感情移入がものすごいことが、読んでいて伝わってきます。
(あと、『はちみつとクローバー』と『3月のライオン』のどちらも読むと、羽海野チカさんの性癖的なものもなんとなく分かります笑)

少女漫画チックでありながら、深い深い感情の描写がなされていて、一冊読み終わるのにかなり時間がかかります。

9月に新刊が発売されていたのですが、読む時間を取れずにいました。
でも本日、書店に行ったら平積みで置いてあったので購入してみました!

2016年10月からアニメの放送が始まりましたし、今話題の『3月のライオン』のレビューをしてみたいと思います。

あくまで私個人の読み方です。
何か意見や読み方の相違があれば、コメントいただける嬉しいです。

孤独な将棋指しと自己受容の物語

というふうに私は読みました。
主人公の桐山くんは両親と妹を幼い頃に亡くしているんです。

そんな彼が生きる道は、厳しい勝負の世界である棋士としての道でした。
桐山くんはプロの棋士である義父に引き取られることになります。
そこで将棋に没頭する桐山くんは、めきめきと強くなっていきます。

しかし、才能のゆえに義理の姉や弟から冷たい仕打ちを受けることになります。
孤独を感じれば感じるほど、桐山くんは将棋の世界に没入していくのです。
将棋と将棋指しだけが、将棋を通じて、彼を受容してくれるからです。

ついに史上5人目の中学生プロ棋士となるまでに成長した桐山くんですが、今まで目標としていた「プロになる」という指標を失ってしまい、将棋に没入できなくなってしまいます。

「プロになる」ということは「将棋に完全に受容される」に等しく、また「自分の生きる世界を手に入れる」に等しいからです。
彼は孤独の中で生きているため、「自分の居場所」を手に入れることが最大の目的でした。
だからそれを手に入れた途端、フッと力が抜けてしまったのです。

プロ棋士として敗戦を重ねる中、彼は三月町という町に住む家族と出会います。
その家族もまた父が別の女性と出ていき、母に先立たれるという暗い過去を背負った家族でした。

彼女たちは、帰る場所のない彼を受容してくれます。

初めて将棋ではなく、「他者」から受容された桐山くんは、戸惑いつつも次第に自分を見つめ始める。

でもやっぱり根無し草であると自覚する彼は、義理の姉に再開して…
という感じなんですね!

少しずつ、人間として大切なものを手に入れていく男の子の物語なのです。
成長していく彼から目が離せません。

「切なさ」を核に据えた作品作り

『3月のライオン』も『はちみつとクローバー』も少女漫画のような雰囲気があります。
と言うよりも、『はちみつとクローバー』は完全に少女漫画ですね。

ただ、少女漫画に多い「主人公がかっこいい男とうまくいく!的な構図」ではありません
どちらの作品でも、うまくいくカップルの陰に、必ず切ない思いをする男や女がいます

そしてその切なさをクローズアップしています。
最新刊でも、最後にそんなことを匂わせています。

『3月のライオン』は掲載雑誌がヤングアニマルですから、男性向けの雑誌です。
主人公も男性に設定されています。
桐山くんの恋がどうなるのか気になるのですが、多分一筋縄ではいきません。

恋はなんて素敵なの!という感じではないところが、大人でも楽しめる理由だと思います。
「昔彼氏に裏切られた」とかそんな生易しいトラウマを抱えているわけではありません。

「死」や「孤独」を背負った男と女です。

考えてみると、『はちみつとクローバー』もそういう恋愛がありました。

一度孤独を知ったら、また手に入れても、失うことを想像してしまう。
そういうことなんだと思います。

男の勝負の世界

「男の」というと、なんだかジェンダー的な問題がありそうですが、将棋の世界というのは男の世界的な要素が強いのは確かだと思います。
女流プロも今は大活躍していますけどね!

真剣勝負というのは、受容の正反対にある要素だと思います。
勝負の相手を否定し続けることが勝負ですから。

ただ、一般的に考えて、勝負事において自己受容は大切な要素です。
自己を受容して、他者を排斥すると言い換えてもいいかもしれません。

そういう世界に生きている桐山くんは、彼の生い立ちのせいで自己受容ができていません。
自己受容が大切な世界に身を置いているにもかかわらず。
将棋に受容されることばかりを考えてきたのは、自分で自分を受容できないことの現れともとれます。

三月町の家族に出会う頃に、桐山くんはあまり勝てなくなっているんです。
それは彼の自己受容の弱さを象徴していると言えます。

桐山くんは三月町の家族と出会い、自己受容が進むにつれ、めちゃめちゃ強くなっていきます。
最近じゃ負けたの見たことありません。

「将棋という勝負の世界」と「家族という受容の世界」を行き来する彼は、そのバランスを少しずつとって、人間として大切なものを取り戻していきます。

まとめ

『3月のライオン』は本当に面白い漫画です!
一冊の内容がとても濃いから、読みごたえがあります。

それに大人にこそ読んでほしい漫画でもあります。
将棋というゲームに興味がない人でも、全く関係なく楽しむことができると思います。

世間をあざとく、器用に生きようとしちゃっていないかな、もっと不器用でいいから真剣に生きなきゃなと考えさせられました。

あと、『ハチミツとクローバー』もとても面白いですよ!

13巻の発売が楽しみですね。

ではまた!